スーツ選び
生地
生地には様々な特徴があり、これが正解というのはありません。
一般的に生地ブランドごとに「○○」は最高級と言われたりしますが、ブランドごとに様々なクオリティー、グレードの生地があり一概に生地ブランドを判断基準にすべきではありません。
ベンツ、トヨタなどの車のブランドが一概に比較にならないように、決まった生地ブランドをやたらに推すテイラーは信用できないでしょう。
軽やかでしなやかなイタリア生地がお好きなら「ロロピアーナ」、ハリがあり武骨な英国生地がお好みなら「スキャバル」「ハリソンオブエジンバラ」をお選びいただければまず間違いないでしょう。
ウール生地に限って言えば、特にオールシーズンなら「ロロピアーナ」の「タスマニア」、春秋の合い物なら「ウィッシュ」、秋冬なら「スキャバル」の「トルネード」がお勧めです。
夏用のウール素材の平織りの通気性の良い生地は光沢がなく、軽く、スーツに仕上がった際に仕立て栄えしません。
モヘアというアンゴラ山羊の毛を使用したものありますが、モヘアは素材そのもの光沢で生地に光沢を出すことができ、平織りの夏生地の夏用素材として重宝されます。
しかし、モヘアは繊維が生地から抜け易く、耐久性がありません。
ですので、私は少々暑いかもしれませんが、夏用にはロロピアーナの「タスマニア」をおススメしています。
縫製
コルヴォでは主にパーソナルオーダー、フルオーダーラインの2種類のラインをメインとしております。
標準体型の方ならパーソナルオーダーで80%の満足は得ることは出来ます。
これは、百貨店などでお馴染みのマシーン縫製のパターンオーダーに体型補正という顧客の体のクセに合わせた補正をプラスしたものになります。
ちなみにコルヴォではパターンオーダーには珍しい、中間プレスという製造過程で生地に何度もアイロンの熱と蒸気で生地を成形していますので、ぱっと見はフルオーダーのスーツのような立体感が出ます。
フルオーダーでは顧客ごとに型紙を作成し、あらゆる体型をカバーします。
また、主に可動部分をハンドで作り、残りの15%を追求するというものです。
スーツの骨格というべき、毛芯が本バス毛芯になる。
ディテールとしてボタンホールが細い糸になり綺麗になり、襟ひげが付く、D環留めなど細部の縫製もこだわっています。
フルオーダーがやはりオススメと言いたいところですが、予算上の事もあるでしょうから、使用シーンごとに作り分けられても良いでしょう。
更に残りの5%を追求したいという方にはフルハンドメイドラインもご準備しています。
フルハンドラインはほとんどの箇所を手縫いで作り上げます。実用的なスーツというよりは趣味の世界のものと捉えて頂ければと思います。
デザイン
馴染みの良いクラシックのスタイルを基本に軽くスパイスを効かせると永く飽きずにお使いいただけると思います。
中には「定番のクラシックスタイルこそ王道だ!」という方もいらっしゃいます。
また、逆にこてこてに「ボタンが青の貝ボタン、袖口のボタンホールはパープル、ステッチは黄色……」と注文される方もいます。
私自身、定番すぎても、奇抜なデザインは飽きやすく、やはり自分だけのスーツ、自分の好みの意匠を少し加えたほうが結果として永く楽しめるのでは?と思うのです。
フィッターと店との相性
残念ながらフィッターとの相性が悪い場合、良いものは出来上がりません。
それが一般的に見て良い物であっても、顧客のイメージを反映出来ていなければそれは良い物とは言えません。
顧客の考え、イメージをくみ取る事ができる聞き上手のフィッターがよいフィッターなのです。
また良いフィッターは顧客の職業を聞きたがります。
職業を聞けば、おおよそ、どのような使用状況になるのか把握できるからです。
『この店員は「いくらぐらい買ってくれるのか?」と客を値踏みしているのでは?』と疑心暗鬼にならずにお教えいただきたく存じます。
座り仕事が多いのなら膝の抜けにくいパンツ、歩きが多いのなら擦れに強い生地、内股を二重に縫おうか、と頭の中で考え、提案するのです。
また英国テーストのお店に、ナポリ調のスーツを注文しても結果は見えています。
やはり、お店のスタイルに共感を出来てフィッターとも話が通じるというのは大事ですね。