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2019年12月

年末ご挨拶

20191231151215.jpg2019年も終わりに近づいてまいりました。

大阪店は場所を移転してのスタートでありましたが

お客様には格別のご愛顧をいただき、誠にありがとうございました。

 

来年はより一層、お客様にご満足いただけるよう精進してまいりますので

変わらぬお引き立てのほど、宜しくお願い申し上げます。

 

2020年が皆様にとってよい年になりますように。

裏地素材について

2019122620225.jpegスーツの上衣に設えられた裏地。

目に触れにくい部分にあるため軽視されがちですが、実は縁の下の力持ちなんです。

裏地の役割は、摩擦をなくし着脱しやすくしたり、動きやすくする効果とインナー等の透け防止の効果、表地の型崩れや摩耗を防止し長持ちさせる効果があります。

なかでも動きやすくする効果を補っている、裏地素材についてご紹介したいと思います。

裏地生地に用いられる素材は主に『ポリエステル』『キュプラ』『シルク』の3種類ですが、シルクが主流だったのは昔の話。

今はポリエステルとキュプラがよく使われています。

キュプラという素材は、再生セルロース繊維というカテゴリの化学繊維でコットンリンターという、綿花を採取した後の、本来繊維として使われない綿実の産毛部分を原料としています。

この原料を使い、銅アンモニア溶液で溶かし、ギヤーポンプで凝固液の中に押出し繊維にするという方法で作られたものをキュプラ、と呼びます。

風合いはレーヨンと似ていて、レーヨンは1884年に木材パルプと原料とした同じ製法で作られました。キュプラはその後に作られるようになったため正式には銅アンモニアレーヨンと言われます。

キュプラの一番の特徴は、静電気が起きにくいことで、他にはとにかく細い糸にすることが可能なため、シルクのようなドレープ感、光沢感、すべりの良さがあり、さらに絹よりも日焼けしにくく、耐熱性があります。

また、吸湿性、放湿性も良いので、衣服を最大限快適に着ることができます。

しかし、キュプラは水に弱く、水によるシミ、シワ、縮みが起こりやすいので洗濯に向かないというデメリットがあります。

強くこすったりすると毛羽立ちもしやすいです。

そのデメリットをおさえ、また価格も下げるためにポリエステルを混ぜて作られた生地もあり、発色においてはポリエステルのほうが良いことからデザイン性のある生地はポリエステル100%のものになります。

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ポリエステルのものを敬遠される方もいらっしゃいますが、糸への加工でキュプラに似せた性能を持たせることも可能になっていますから、選択肢は広がりますね。

裏地選びは私も楽しみな時間ですが、表地との色柄の組み合わせだけでなく着心地にもさらにこだわった、自分なりの一着を作ってみてはいかがでしょうか。

予算十万で最良のスーツを買うには。

コルヴォの中間価格帯はフルオーダーラインで15~25万前後。

「コルヴォは高い」 そんなイメージを持たれていませんか。

最近は縫製工場も生地商社も年々、値段が上がって言います。

10年前と比べインポート生地は顕著に円安、原材料高騰のあおりで1.5倍ぐらいの値段に。

更に昔は、「30年前はこの生地は○○円、あの工場の縫製賃は○○円だった。それでも生地屋も工場もテーラーもみんな仕事がいっぱいで儲かった。」

と同業の先輩からお聞きするとびっくりします。

コルヴォのお客様でも日常使いのスーツ全て数十万のスーツをという方は少ないです。

でも10万円以下のスーツも一押しです。

初めは「社長さんが社員さんにスーツをプレゼントしたい」「成人式用に」とお値打ちなものをとの要望で予算の中で一番良い提案をできたらと試行錯誤いたしました。

まずは生地選びです。

ロロピアーナ、ゼニア、スキャバルなどの一流生地ブランドの高価な生地では予算内に収まりません。

コストパフォーマンスが高い生地ブランドといえばスキャバルの系列のイタリア系ならテシルストローニャ、英国系ならアーサーハリソンズが上げられます。

雑誌などではレダ、カノニコが上げられますが、以前ほど質と共に、徐々に仕入れ値が上がっていますのでコストパフォーマンスという面では疑問です。

次に縫製です。 コルヴォのパーソナルラインは正真正銘の総毛芯、最近多い毛芯を接着芯で固めた物ではなく糸で留められたものです。

糸止めの毛芯は接着芯と違い、雨、汗などの剥離に強く長く形を維持できます。

コルヴォのパーソナルラインはCADシステムといい、既存の型をベースにパソコン上で型紙を製作します。

対応力は手書きの型紙に劣ります。

しかし、体形補正などの基本項目は指示できますので、豊富に型をご用意してますので、9割方の体型はカバーできます。

また、スーツの出来栄えに非常に重要な中間プレス(製作途中に立体的に生地を曲げる工程)も行っているので、そばで見ない限りフルオーダーに近い仕上がりになります。

中間プレスを行うと胸に高さが出て、スタイルが良く見えます。

縫製面でもボタンホールはミシン縫いですが、細い糸を使用し後メス(ボタンホールを作ってから穴をあける)ですので仕上がりは綺麗です。

ミシン縫製ではボタンホールが汚いとか、細かな部分に粗のある工場が多いのですが、コルヴォのパーソナルラインではその心配はご無用です。

パーソナルオーダーはフルオーダーに比べ基本オプションが少ないです。

他店さんではオプション、オプションでいわれていた金額のプラス1万ってことも。

コルヴォではよく注文を受ける、基本的な部分は無料です。

ステッチ、天然のナット釦、本切羽、継台場、キュップラー裏地も無料です。

水牛釦を追加しても2000円です。

2ピース98000円+2000円(本水牛釦)、合計10万でおさまります。

今はスキャバルフェアー中なので、スキャバル生地を使っても98000円です。(正直、安い(笑)!!!)

グローブのお話と、

 今年は暖冬で手袋なしでも外出がさほど苦ではありません。

イタリアではコートに手袋をチーフのように挿すことが多いです。

防寒性の機能以外にファッションアイテムとして取り入れるのもありでしょう。

ちなみに大きく分けて革手袋は内縫い、外縫いのものがあります。

内縫いは外に縫い目が出ないのでドレッシー、スタイリッシュな印象を与えます。

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https://merola.jp/より

内縫いはピッタリ目の物を選ぶことをお勧めします。

内縫いはドレッシーなチェスターコート、濃色系のアルスターコートに好相性です。

外縫いは縫い目が外に出ているもの。

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https://merola.jp/より

野趣的でややカジュアルな印象になります。

外縫いの物は割と色味、素材もシュリンク、牛皮以外にオーストリッチなどバリエーションが豊富です。

外縫いの手袋はスポーティーなポロコート、トレンチコートなどと好相性です。

とくにハンドメイドグローブで有名どころとしては、イタリアのメローラ、イギリスではデンツが上げられます。

私は好んでメローラの手袋を二枚とネクタイを3本所有しています。

冬はグローブ、閑散期の夏場はネクタイを作るという、グローブとネクタイの専門ファクトリーブランド。

東京にしか店舗がないようですが、通販サイトもあり年に一回程度、私も購入しています。

私事ですが銭湯めぐりが趣味なので、グローブが恋しくなるようにもっと寒くなってほしいものです。

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私にとって今年一番残念なニュース。

私のここぞという時の一着をお願いしている、フルハンドメイドの職人さんが今年限りで引退されることを聞きました。

来季は何を作ろうか楽しみにしていたのですが、残念でなりません。

現在、オーダーメイドスーツ業界の職人不足は大きな問題です。

今現役のスーツ職人さんって70代の方がほとんどで高齢化が深刻です。

一番の問題は日本で明治以来培われた技術が途切れてしますことです。

改めて手縫いのスーツの魅力を伝えねばと、思う次第でございます。

高価格帯の商品は、なかなかうまいブランディングがないと厳しいのかと思います。

日本の職人さんの手仕事は海外に負けてないのに謙虚な方がおおいので、もっと脚光を浴びていただきたいと思います。

スーツの名脇役、ボタンのお話

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ボタンはスーツにとって欠かせません。

女性のアクセサリーのように小さくても存在感抜群です。

ボタンが安価なものではスーツまでもチープな印象を与えます。

仕立てのイマイチのスーツでもボタン一つでワンランク上質なものにも見えます。

光沢のあるもの、マットな物ありますが、テーラーでは高級感のある艶のあるものが好まれる傾向にあります。

スーツ、ジャケット用のボタンには様々なボタンがあります。

安定した品質の石油製品の練り釦、自然素材を活かした天然釦、金属製のメタル釦、超高級品としてべっ甲なんてものもございます。

最近では10万を超えるスーツでもプラスチックボタンっていうものも増え、天然釦のスーツは希少性を増しています。

今日紹介するのはスーツ用の高級釦の代名詞は水牛釦です。

これは水牛の角を削りだしたものです。

自然の色味を活かし、天然物で木の年輪のように、模様がどれ一つとしてないのが魅力です。

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色がダークブラウン、茶、ライトブラウンに淡くなるほど希少で高価になります。

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オフホワイトは最も高価な物として市場に出回っていますが、これは水牛の角ではなく、骨を削りだしたものです。

経年変化は割としにくいという特徴があります。

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意外と注目されないのが「ナット釦」。

本水牛釦に次ぐ高級釦とし使われます。

これはエクワドルのタグワ椰子の実が原料となっています。

完熟を通り過ぎ、落下し乾燥し硬化した種子を原料としてます。

この原料となる種子は「象牙色」で乳白色をしています。

染色が容易なため、様々の色味のナット釦が出回っています。

経年変化で濃くなるのを楽しめる釦とされます。

水に弱く色落ちしやすいため、注意が必要とされます。(私個人的には色落ちで不便を感じたことはありません。)

ナット釦は水牛釦より柔らかな印象になりますので、ジャケット、夏用の薄手、淡い色のスーツにオススメです。

ちなみに英国調のスーツとイタリア系のスーツに使うボタンって形が違います。

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イタリア系のスーツ、特に南部イタリアのテーラーはお椀型のボタン好んで使用します。

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(ひっくり返した写真ですがわかりずらいですが、ご了承ください。)

僕の推測ですがお椀型はナポリのスーツに多い重釦にした際に、釦の重なりが綺麗になるからでしょう。

また、このお椀型のボタンは直径がほかのボタンより1㎜小さく、針孔が小さいのが特長です。

針孔が小さい釦はボタン付け専門の工業用ミシンでも取付けることが不可能ですので、手付けの証になります。

英国調のスーツに多いのは平ぺったいお盆状の形です。

アメリカ系はこの真ん中が凹んだものを使います。

生地選びのポイント

生地を選ぶとき、目的やお手持ちの色柄、お好みなどを伺って決めていくことが多いのですが、普段スーツを着慣れない方はイメージや好みは持ちづらいもの。

ブランドもたくさんあって余計に迷ってしまう、という方も多いことでしょう。

 

お客様の中には、推しブランドがあり指名買いする方もいらっしゃいますが、たとえ私たち販売側であっても、自身に合うものは実際に作って着てみないと分からない、というところもあります。

ブランドごとに試行錯誤する、というのはどうしてもお金と時間がかかってしまうものです。

 

しかしたくさんあるブランド生地も産地に注目して見ると、ほとんどがイタリアかイギリスで作られており、それぞれの風土に合わせて生地にも特徴が表れています。

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イタリア生地はよく糸が細いものから作られるため、軽く、柔らかく、しなやかであって、イタリアンが彩り鮮やかなように目に楽しい色使いが多くあります。

仕立てると光沢が一層映え、華やかで艶やかな印象になり、いつも堅苦しく感じるスーツもストレスなく着用することができます。

糸が細い分、毛玉や、擦り切れやすくなってしまうこともあるため、間隔を多めに開けて着たり、皺ができたら霧吹きをかけて戻してあげるなどの手入れが必要となりますが、手間のかかる分、愛着も湧いてきます。

華美な柄でなくとも良いものであることがわかりやすく、色気とスマートなスタイルを与えてくれるので、パーティーや食事会、デートなどアピールする場にぴったりです。

お仕事では服装に関して比較的自由な職場の方におすすめしています。

 

ブランドでいうとロロピアーナ、ゼニア、バルベラ、カノニコなどが有名ですね。

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イギリスで作られた生地は糸が太く、重く、堅く、しっかりした生地が多いです。

デザインは曇り空ともいわれるくすんだグレーがかった色味が多く、オーソドックスな柄で武骨な印象を与えてくれます。

イタリア生地に比べるとツヤがありませんが、古きを大切にした街並みを思わせる重厚感のある雰囲気を好まれる方に人気です。

スーツにすると構築的でたくましいシルエットになります。

仕立ててすぐは堅い着心地なものの、だんだん体に馴染むようになり、デニムのように「育てる」という感覚で着用していただけます。

太い糸を使っていることで耐久性があり、独自の織り方のためにシワに強くなっていますから、普段使いができる生地です。

安定した強い印象になるため、「信用」「信頼」を必要とする職種の方におすすめしています。

 

ブランドでいうと、ハリソンオブエジンバラがこの特徴が色濃く出ています。

また、ドーメル(フランス)や、スキャバル(ベルギー)といったマーチャント(商社系の生地屋)にはイギリスの織元が多く、イギリスらしい定番から生地の特性を生かしつつ流行やデザイン性の優れたものもあるので飽きることもないでしょう。

 

ちなみにイタリア、イギリスの2つに日本を加えて三大毛織産地と言われます。

Corvoで日本産生地の取り扱いはないのですが、イギリス生地と似た風合いのようで、大手高級ブランドからも人気があります。

 

自分の好みがイタリア系なのか、イギリス系なのかがはっきりすると、生地選びもしやすくなるのではないでしょうか。

私のコート遍歴

高校生時代はコートを着ずに軍手にブレザー姿で学校まで1時間かけ自転車で通学していました。

今思えば、昔の冬の方が寒かったのによく耐えられたなっと思います。

校門に立っている先生に「お前を見ていると寒くなるから早く教室に行け」とよく言われました。

私以外にもそうした強者は何人もいたのですが、最近は代謝が悪くなったのか、専ら、コートなしでの外出が億劫になりました。

反動でしょうか、テラードの中でスーツに次いで好きなアイテムになりました。

割と数多く持っています。

今日、ご紹介するのは、濃紺のピークドラペルのチェスターのカシミヤコート。

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確か、仕立てたのは2014年頃。 定番のコートとして、一着は真面目な形とは思ったのですが「コルヴォはピーク襟押しでしょ」とスタッフに言われピーク襟に。

この当時、「莞爾」「奉文」のオリジナルモデルを売り出し中でしたので、ピーク襟がコルヴォのスタッフの中でブームでした。

「形は普通なら素材はとんでもないものを使おう」と、生地はロロピアーナの最上級のカシミヤ生地で、ヘビ―ウェイトの570g/mあるので防寒性は抜群です。

「繊維の宝石」と言われるようにカシミヤは希少性のみならず、太陽光の元では煌めくような光沢があります。

Xラインのシルエットに巾広めの襟、フォーマルな膝下丈、仕様にこれと言った特徴はありませんが、素材の存在感は抜群です。

ここぞという場、畏まった場、寒い日に使います。

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このコートで鳥取砂丘に行ったことも。(笑)

2年ほど前にパンツ工場の見学のあと、スタッフと一緒に砂丘に行きました。

 

続いてはクリーム色のベビーキャメルのダブルチェスターコート。

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ロロピアーナのコレクション「オーバーコート」に初めて「キャメルヘアー」がラインアップされたときに作りました。

「砂漠は昼は50度、夜は零下20度になるというほど寒暖の差が激しいのでラクダの毛はそうした環境に耐える為に温度調整機能が発達している。」 と説明を受け、この生地を選びました。

この生地は生後半年以内のラクダの一番初めに採取される原毛のみを使用しています。

肌触り真新しい毛布のようにしなやかです。

キャメル生地の特徴はカシミヤ生地に似ていますが、光沢が抑え気味で、フェルト化しにくい(ふわふわ感が持続)のが特徴です。

キャメル生地は吸湿性に優れるといわれています。その効果か、体感的に暑くなるとカシミヤ生地は蒸れるのですが、キャメル生地はそこまで気になりません。

キャメル生地ならば、定番のポロコートにしようか、迷いましたがダブルチェスターコートに。

着丈は身長170の私に115cmというロング丈。 背プリーツと背ベルトを付けました。

作ったのは2015年前後です。良い感じにエイジングされ毛羽立ってきています。

この時期は生地をたっぷり使ったビッグシルエットでロング丈のコートがメゾンブランド中心に提案され今後、流行ると言われ流行の先取りを意識しました。

2015年前後では膝上の着丈90cm前後のものがほとんどでした。

2019年今季の受注は膝下、100cm以上の丈がほとんどでした。

ちなみにインポート物で最近はキャメル生地のコートも出回ってきました。

このコートを着て外出すると、必ずこのコートについて指摘されます。

あと雨の日用にユニクロで防水ステンカラーコートを一着買いました。

プラスチックボタンを水牛ボタンに変更しました。

今の気分はラグジュアリーなコートは揃えたので気軽に使える、ステンカラーコートがマイブームです。

立ち食いそばでも汚れを気にせず、食べれるのがうれしいです。(笑)

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2枚裁ち、3枚裁ち

お客様に納品の際に 「コルヴォのスーツは良い仕立てだね。二枚裁ちだ」 とお褒め頂きました。

「莞爾」「奉文」「チェスターコート」は2枚裁ちです。

この2枚裁ちか3枚裁ちはショップ店員でも知らない方がほとんどで、一般のお客様でご存知ない方がほとんどでしょう。

こんなことをブログにするのはマニアックすぎて気が引けるのですが(苦笑)

僕自身もお客様に指摘されるまで、2枚裁ちであるか3枚裁ちであるかを忘れていました。

スーツの原型がラウンジスーツが生まれた当初は2枚裁ちでした。

この当時はダーツもなくふっくらしたシルエットでした。

20世紀前半まではスーツは誂えの、ハンドメイドがほとんどでした。

ハンドメイドのスーツは生地にアイロンで何度も生地に熱と蒸気を加え、生地の熱可塑性を利用し立体的にしていくものでした。

20世紀後半にはミシンによる大量生産の時代になるにつれて縫製が簡略化されていきます。

アイロンワークは手間がかかる、しかし立体的な仕立てを実現するには?

そこで効率的に立体的なスーツを作るためにはどうした良いかという事が考えられました。

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前身頃、細腹、後身頃の三つのパーツで片身を構成する。

3枚裁ちの型紙

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3枚裁ちの上着

(白線が縫い目、赤線がダーツ)

「細腹」を取るという事です。

「細腹」はもともと主に曲線部が多い女性服に使われていた手法です。

パーツを細分化すると使用できる生地が多くなるという事で、ドイツ軍などの列強の中でも後進的立場の軍服に採用されたと聞いたことがあります。

従来の前身頃、後見頃が2枚裁ち。 前身頃、細腹、後見頃で3枚裁ちのスーツが現在の主流となったのです。

現在では3枚裁ちの方が、立体感が生まれるという事で、アイロンワークと併用しているテイラーがほとんどで、3枚裁ちが仕立ての悪いとは言えません。

しかし2枚裁ちは手間がかかる上に、生地を一着当たり20cm程、多く必要とするので現在はあまり見かけない仕様です。

ちなみに貫通ダーツ(裾までのダーツ)を入れないと、2枚裁ちは胸とお尻に膨らみが出来るので「砂時計型」と言われ、着丈の長くするシルエットになります。

貫禄を持たせたるスタイルは、貴族社会のフィレンツェなどの北部イタリアのスーツに多い仕様です。

3枚裁ちのメリットは尻周りを小さくすることができるという事です。

2枚裁ちで尻周りを小さくするためにコルヴォは貫通ダーツを入れます。

バストは大きく、ウェストはくびれ、お尻はキュッとしたグラマラスなシルエットになるのです。

2019122175834.jpg2枚裁ちの上着

 

ネクタイは必要?

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クールビズが定着して、今では年の半分しかネクタイをしない。という方も多くなりました。

社会で(畏まった場以外で)のノーネクタイがこれだけ認められてくると、

そもそも、ネクタイをする意味ってあるの?

もしかして、要らないんじゃない?と疑問がわいてきます。

 

ネクタイの起源についても調べてみたのですが、全世界で広がりすぎたために

曖昧なものばかりで、はっきりとした説はありませんでした。

その中でも一番有力といわれるのは、17世紀にクロアチア兵がしていた、

恋人からお守りとして贈られたというスカーフがあり、それをフランスのルイ14世が

「クラバット」と呼びお洒落に取り入れるようになった、という逸話です。

フランス語でネクタイをクラバットといいますから、かなり信憑性がありそうですね。

そして瞬く間に世界に広がった「クラバット」はその後、服装の機能的な進化と共に

簡素化し、スカーフの形から、今のネクタイとなったようです。

 

お洒落として取り入れられたネクタイはなぜ世界に広がり、廃れず現在まで継承されたのでしょう。

私の推測ですが、男性社会において大変重要な地位や権力を示すための装飾品は、

日本での冠や兜のように、大抵顔の周りや胸より上の位置につけられていました。

貴金属より手軽で邪魔でなく、見る人の視界に入りやすく、防寒にも使える装飾品ということから、

安くて軽くて、手軽に楽しめるネクタイが広く受け入れられたのではないかと思います。

となれば現代、社会的地位を示す手段は増えましたし、暑苦しく邪魔でしかないネクタイは

廃れるしかないのでしょうか。

 

ただ一つ、ネクタイにしかできないことがあります。

それは印象操作です。

 

例えば、アメリカの大統領が演説を行ったとき、紺スーツに赤いネクタイでしたよね。

これが紺のネクタイ、またはノーネクタイに変わっていたらどうでしょうか。

わかりやすいアピールだとしても受ける印象は大きく違うはずです。

初めて会ったコワモテの上司がピンクのネクタイをしていたらどう感じますか?

無趣味そうに見えるあの人が、ドットに見せかけたゴルフボールのネクタイをしていたことに気づいたら、

なんて話しかけますか?

このように自分をよりプラスのイメージにすること、これはスーツとシャツだけではできないことです。

 

暑苦しい時期が過ぎてネクタイを締める日々に戻ったとき、めんどうだなぁと言われず、

イメージチェンジや自己アピール、コミュニケーションツールとして、

ネクタイが広まっていくといいなと思う今日この頃です。

フルオーダーシャツのススメ

突き詰めればスーツはオーダーという方は、多数派ですが、シャツに関しては少数派にかんじます。

お金の問題で既製のシャツという方もいるとは思いますが、当店でもスーツより受注が少ないのが現状です。

あとは百貨店の仕立て券をもらうからシャツは百貨店で、という方も多いです。 こだわり派はインポート物を購入するという方も多いですね。

インポートブランド、特にイタリア物のシャツは襟型が非常に綺麗です。

インポート物と国産の違いは襟のロール。

日本のシャツブランドの物は直線的なものが多いです。

コルヴォのシャツは、そうした雰囲気を忠実に型に落とし込んでいます。

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曲がっている部分を縫うというのは、想像以上に職人の腕が必要かつ、生産効率が落ちます。

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なので、ひと手間加えることでグッとかっこよくなるのはわかっていても工賃の関係で、ロールはやりたがないのでしょう。

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このS字カーブ。 このS字が襟先がスーツの襟に乗らないようになるのです。

襟先がスーツの襟に乗るというのはナポリでは抜け感を出すためにあえての場合もありますが、日本では気にされる方が多いです。

自然なロールを楽しむために、こだわり派は成形用のカラーキーパーを抜く人は多いです。

またスナップ釦、ボタンダウンは襟の自然なロールを消すので嫌という方も多いです。

私は首が太く短く、鎖骨が張っているので乗ってしまうことがあります。(笑)

対応としては襟先を長くすることですが、バランスが悪くなるのでやっていません。

通常体型の方なら大丈夫ですのでご安心ください。

こうして改めて拡大してみるとわずかに曲線部が非常に多いです。

こうした小さな手間が出来栄えを左右し、着た時の印象に大きく影響を与えます。

あと、良いシャツは立体的にできているので非常にアイロンがかけにくい。

奥様がアイロンをかけるという場合、コルヴォのシャツを購入すると奥様に迷惑をかけるかもしれませんね。(笑)

ちなみにコルヴォのシャツは非常にミシンの縫い目が細かい。

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これは日本人ならではの手仕事のなせる職人技。 コバ、淵ギリギリに施されたステッチは高級シャツの証ですがここまでのものはインポートもでも、お見かけません。

お値段も国産生地で2万、インポート生地で3万程度で、インポート物より2~3割安い程度ですが、ここぞの一着はインポート物の模倣ではない国産シャツの魅力を是非体験いただきたいです。

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