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2012年5月

super表記と生地の質

 生地を見ているとsuper100(スーパー100)と言う表記を目にしたりしますよね。
 
 これは原毛の細さを表します。
 
 Super100なら18.5ミクロンで、10表記があがると0.5ミクロンづつ細くなります。
 
 例えばsuper120なら1ミクロン細い17.5ミクロンと言う意味です。
 
 一般に原毛が細いと高品質といわれています。
 
 オーストラリア産の原毛の平均が24ミクロンと言われています。また、全世界の羊毛の生産量のsuper120以上のものが5パーセント未満と言われています。細くなればなるほど希少な素材と言うことです。
 
 あくまでもsuper表記で知ることができるのはあくまでも原毛の質で生地の質ではありません。
 
 細い原毛であっても生地に使う量を減らすには打ち込みを甘くすればいいのです。(打ち込みが甘い=単位面積当たりの糸の本数がすくない)
 
 同じ生地ブランドで値段が同じでもsuper表記が違う場合が多々あります。それは加工の違いもありますが、使用する原毛の量の違いが大きいです。
 
 中にはsuper80前後の最高級生地もありますので一概にsuper表記が低いからと言って悪い生地とはいえません。逆も然りです。

オーダースーツを知った玄人好みの生地(タリア・デェルフィノ)

 知名度がなくとも質が高い生地はたくさんありますよ。
 
 例えばイタリアのミルブランドのタリア。デェルフィノです。
 
 Corvoでは人気が高い生地ですが、他のオーダースーツ店では知名度がないせいもあって余り人気はないそうです。
 
 ちなみにビームスかユナイテッドアローズかでこの生地を使った既製のスーツが売られていました。セレクトショップは専属の企画部があるのでなかなか、流石によい生地のチョイスだと感心しています。(上から目線ですいません)
 
 タリア・デェルフィノはビエラ地方で1903年創業の老舗です。
 
 ミルとしての技術は業界の中でも定評があり最高品質の生地のみを作ります。とくにプレタ(既製服)ブランドからの評価が高く、ブリオーニ、キートンなどの一流ブランドに生地を提供しています。
 
 近年ではリネン素材、コットン素材などの多彩な生地を提案しています。
 
 素人受けするものというよりも玄人好みの生地です。
 
 柄も定番のものから、捻りの入ったものも多く、価格も品質に対して非常にいいので私自身も特に気に入っている生地ブランドです。

オーダースーツ業界に対する愚痴

 愚痴っぽくなるのですが、この業界は業界人でさえ先入観でスーツの仕立てを語ることがままあります。仕立てにほとんど理解が及んでいないのが実情でしょう。
 
 アパレル業界は値段があってないようなものでブランド品、百貨店で売られていたからといって品質を保証するものではありません。
 
 業界の方でCorvoのスーツを見てパターンオーダーの場合は袖を後でつけるところがあまり多くないので、ねじれがでているところが多いとの先入観でねじれているとと指摘されたことがあります。(苦笑)Corvoの場合は後付けですので、人の手による作業ですのでごく微量のずれは出ますがねじれはでないのに。
 
 オーダースーツ業界の方でも仕立てについてわかっていないなんて。それで「いいのか」と思うことがままあります。
 
 一般にパターンオーダーは機械で裁断するため、特にチェックの場合、柄がずれることがあります。業界の方にもCorvoのスーツを見てズレていると指摘されました。
 
 Corvoの場合は手裁断によって職人が丁寧に柄を合せていますので寸法の関係で多少の柄がずれることはありますがミリ単位に抑えています。
 
 いいことばかり言っていてはいけませんね。Corvoのスーツにも弱点はあります。接着芯を使用してないので一般的なパターンオーダースーツに比べ雨が降るとシワが出やすい。また、天然素材を使用しているので稀に表地から飛び出すことがあります。
 
 また、納期も手作業、またインポート生地の水分量の安定などで一か月前後かかってしまいます。
 
 販売員の方でも毛芯について存知ていない方がおおいのもこの業界です。
 
 「通常、夏物には毛芯は入っていないですよ」といわれたことがあります。さわって見てどう考えているのに毛芯が入っているのに。
 
 この業界の問題は仕立てを理解していない経営陣が縫製賃の安い工場に仕事をまわし、仕立てにこだわったスーツがどんどん廃れていきます。
 
 やはり仕立てにこだわるとコストはかかります。しかし、それには当然、付加価値はあります。
 
 当然、安さを追求することも一つの別の消費者の方にとっての価値です。(我々の業界は安価なものを売るブランド、店をつい否定しがちですが、それも一つの価値と私は思っています。)
 
 お客様も高い買い物をするのにろくに安い商品との違い、付加価値を説明もできない販売員を信用できませんよね。
 
 また生地もブランド名だけで大した質もないブランドが蔓延っていますね。そんなにブランドにお金をかけなくてもいい生地はあるのに。
 
 高価なものが売れない時代といいますがオーダースーツ業界に限っては売り出す側の勉強不足のように思えてなりません。業界に身を置く一人として私自身もお客様の立場にたち身の振り方を考えなくてはなりませんね。

一流の海外スーツブランドとくらべCorvoのスーツの縫製技術は?

 Corvoの縫製は海外スーツブランドにくらべどうなのか紹介させていただきます。
 
 Corvoのスーツは生まれはイタリアの一流ブランドのスーツを参考に世界的に見てもトップ水準の日本の国内最高峰の縫製技術をもってクラシコイタリアのスーツをモデルに作ろうとしたのが始まりです。ここで紹介するブランドはいわばCorvoの師匠でもありました。(笑)
 
 まずはキートンです。
 
 1969年創業のイタリア南部ナポリのブランドでもともとフルオーダースーツ職人が集まり、既製のスーツブランドとして始まった、技術集団を擁する一流ブランドです。
 
 手作業を随所に施し、いかにもナポリらしい柔らかいスーツを仕立てます。
 
 また、「クラシコイタリア協会」に加盟しており日本でクラシコイタリアとしてイメージされるスーツはキートンのものが多いです。
 
 次はブリオーニです。
 
 1945年創業のイタリアを代表する最高級ブランドです。
 
 こちらも手作業を随所に施し、アイロンワークを施した美しいシルエットのスーツを提供することで各国の富裕層の間で人気を博しています。
 
 イギリスのスパイ、「007」の主人公がブリオーニのスーツを着ていたことで話題になりました。現在もブリオーニのスーツです。
 
 2002年には「クラシコイタリア協会」を脱退したものの仕立てにこだわったイタリア調のスーツを現在も提供しています。
 
 どちらのブランドもスーツの価格で50万円以上してしまいます。
 
 百貨店ならCorvoと同じ縫製でも20万円そこそこで売っています。
 
 実はCorvoのスーツはこれらのブランドスーツと同等以上の仕立てなんですよ。毛芯、たれ綿などの素材はもちろんそれらのブランドと同等品質のものです。むしろ、うちのほうがいいかもしれません。縫製に関しても全く遜色がなく、日本の縫製というのはそれぐらいのレベルの高いものなんですよ。(笑)

オーダースーツを取り巻く環境(イギリスにマーチャント、イタリアにミルが多い理由)

 先日、生地屋の方から教えていた薀蓄を披露させていただきます。
 
 生地屋には卸問屋、織元、企画屋など「生地屋」と一言に言っても色々とあります。
 
 特に生地の生産を行うところを織元、ミルといいます。
 
 企画、生地のデザインをしそれを織元に織らせて自ブランド、他ブランドの生地名で市場にだす、企画屋をマーチャントと言います。
 
 私のようなオーダースーツ店はそうして企画、生産された生地を市場にだす流通を担当する生地問屋さんと直接、生地の仕入れをお願いします。
 
 中にはロロ・ピアーナ、ゼニア、スキャバルのように大資本をもとに同一法人で生産、企画、流通までも担当する生地会社もあります。そうしたところは全体から見れば稀です
 
 イタリアの生地ブランドはミルが多く、イギリスはマーチャントが多いのはよく雑誌に載っていてご存知の方も多いかと思います。
 
 「なぜ、そうなったのか?」というともともと、イタリアはイギリス、フランスなどのブランド品の下請けとしての性質が非常に強かったそうです。仕事を請け負ううちに縫製工場、生地の織元などの生産の効率化、資本の集中が起こり町工場単位のものがだんだん、集積していき大規模工場へと産業体制が変化していったそうです。
 
 その結果、企画、生産、問屋との交渉を行うミルが多くなったそうです。
 
 一方、イギリスは資本投下が行われず生産効率の悪い町工場単位のものが多く、企画を行うまでの体力がなく、一括して原毛の仕入れ、生地のデザイン、問屋との交渉を行うマーチャントが多いと言うわけだそうです。

ダンディーな男 白州次郎

 「日本のプリンシパル」「従順ならざる唯一の日本人」などと謳われる白州次郎ですがファッション界の中でもダンディーな方として有名です。
 
 始めて日本人でジーパンをはいたのは白州とも言われています。
 
 ロンドンに留学を経験し、海外経験がながく西欧のファッションに深く造詣があった方です。
 
 また背広をロンドンのサヴィル・ロー15番地に店を構え、最も古いといわれている老舗テーラー「ヘンリー・プール」で仕立てていたそうです。ちなみこのテーラーには吉田茂元首相も通っていたそうです。またチャーチルもこのテーラーの顧客でした。「和製チャーチル」と渾名された吉田茂とその側近であった白州が顧客とはなんと言うめぐり合わせでしょうか。
 
 ここまでなら単に老舗テーラーの顧客であった人で終わってしまいますが、白州は軒に仕立てあがった背広を吊るしよれよれになってから着たそうです。
 
 彼の言葉に「ツイードのジャケットは軒に2,3年吊るしてから着ろ」というものがあります。
 
 イギリス人は日本人と似た古いものを大事にする心があります。「わび」というものにちかいのでしょうか。父から譲り受けたスーツを一旦、解きそれを子がまた仕立て直し使うイギリスではそれが当たり前なのです。そうした精神を白州さんは理解していたのでしょう。

夏は薄いブルーのシャツ

 お客様から透けないシャツをと問い合わせを頂きました。
 
 夏は汗をかくから肌がすけたり、脇汗が染みたりと厄介ですね。
 
 Corvoのお客様は白シャツをご注文される方がほとんどです。ブルーのシャツを勧めてもやんわりと断られます。(笑)
 
 肌が透ける、汗染みが気になる方は色の入ったシャツをお勧めします。
 
 白シャツに慣れてしまうとなんだか柄物、ブルーのシャツには抵抗がありますよね。わたしも二年ぐらい前までは白シャツしか持っていませんでした。だからお客様が抵抗を持つ気持ちが分かります。
 
 そんなときは遠目で白に見える、淡いブルーのシャツはいかがでしょうか?
 
 見た目にも清涼感がで夏にはお勧めです。

オーダースーツはマシン、ハンドどちらが上?

 オーダースーツはハンドワーク、マシンメイドなど色々と言われますが追求すべきは体に沿うようなフィット感と美しいシルエットです。
 
 マシンメイドかハンドメイドどちらが優れているのかと言えば一概には言えません。ハンドメイドは手作業ですからズレが生じもしますが職人の手の味とクライアントに対し細やかな対応が可能です。マシンは機械を使い、各所ごとの縫う職人が分業で仕立てますのでズレはほとんど生じません。
 
 ハンドメイドは総合点、マシンメイドは部分点の集合と私は言っています。
 
 ハンドメイドはほとんどを一人で仕上げますので全体のバランスで勝負します。ハンドメイドは一部をみると縫いズレがあったりしますが離れてみてみると全体のバランスは良いです。(一部、分業化している場合もあります。)
 
 マシンはそのパーツ、作業ごとのエキスパートが仕上げます。ですのでフルオーダーの職人よりもその特化された作業は技術的には上なのです。その部分分の作業の集積がスーツとしての最終的な質となるのです。
 
 Corvoの場合は分業化され、職人によってマシン、ハンドの両方を施しています。いいとこ取りをしています。(笑)ですので部分を見てもズレはありませんし全体のバランスは良いです。
 
 しかし、一人の職人の味、感性がいきたフルハンドメイドのスーツはいいものです。機械化が進んでも根強い人気のあるのはそれ故でしょう。

ネクタイにはデインプル

 デインプルはえくぼ、くぼみなどの意味を持つ言葉です。
 
 紳士服業界ではネクタイを結ぶ際に入れる皺のことを言います。
 
 
 
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 今は比較的に一般的で多くの方が入れていますよね。
 
 なぜこのシワを入れるのかはよくわかりませんが入れたらネクタイの形が良くなるとも言います。(あまり、わかっていなくて申し訳ありません)
 
 しかし、ディンプルを作った方がたしかに形がよくなります。襟もとに立体感もでてエレガントに見えます。
 
 また、このディンプルを作りやすいか作りにくいでネクタイの質がわかります。結んだ際に自然にディンプルのでるものはいい芯を使っている証拠です。
 
 ちなみにシワが残るので他店でネクタイを結んでみる場合は店員さんに一言断りを入れましょう。業者の方に以前、私が断りを入れずに結んで注意を受けました。(すみませんでした。)
 
 (現在、Corvoではネクタイは取り扱っていません。)

スーツの地域性

 私事なんですが自分は愛知県出身で赤味噌が好きです。(笑)
 
 赤味噌は白味噌に比べ塩分濃度が高といわれています。赤味噌は中京区(豆が原料のもの)、東北区(米が原料のもの)で多く親しまれています。
 
 昔は大阪などの商業の都市にたいし中京区、東北区は農業の地区で農業に従事することから、汗で失われる塩分を補充するために赤味噌が一般的になったと言われています。
 
 鯉こくなども、冬の間、狩猟にでられない内陸部の人がタンパク源としたそうです。
 
 また、京料理の定番の鱧も内陸まで生きたまま輸送に耐える強い生命力をもっていたために京都で食されるようになったそうです。
 
 食文化には昔の人の生活様式、環境によって生まれたものがほとんどです。
 
 今は昔とちがい流通、情報伝達が発達しそうした地域差はなくなりつつあります。しかしそうした地域差は残っています。
 
 スーツにも英国調、カントリー調、ナポリ調、ミラノ風、フィレンツェスタイルなど色々と差があります。いまはかつてほどその特色、違いはなくなりつつるそうですがやはり地域差は残っています。
 
 それは貴族社会、農業社会であったなどの地域性、社会性などに端を発したものがほとんどです。
 
 イタリアはもともと都市国家の集まりで各地独自性が非常に強くその地域によってスーツの形も違います。パスタの形、スパゲッティーの食べ方ですら都市毎に違うとも聞きます。
 
 またイギリスも都市部と郊外は生活様式も全く違い、スーツも生地もまったくちがったものです。
 
 田舎のほうでは狩猟を楽しむために、銃などで狩猟の際にすれを防ぐ胸、肘などに当て布のついたハンティングジャケットなど様々な特徴的なものがあります。
 
 そうした違いを楽しみながらルーツ、歴史背景などを考えながらスーツの形、生地、靴、小物などのコーディネートを選んでみると一層、スーツの楽しみが広がりますね。
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